2025-01-05 世界の基が置かれる前から

2025年 1月 5日 礼拝 聖書:エペソ1:1-14

 まだ完成はしていないのですが、昨年70周年記念誌のまとめをしながら、教会について考えさせられていました。私たちの教会が71年前に始まり、辿って来た道のりには、様々なことがあり、神様の真実さをありありと感じることができますが、同時に、教会や教会の重要な使命である宣教について、十分に理解できていなかったことや失敗がいくつかあったなあとも思わされています。

そして、2024年度の年間主題は「教会再発見」ということでしたが、このテーマでは十分に語って来ませんでした。基本原則の学びをしている方々は教会についてよく考える機会があると思いますが、礼拝ではまとまった取り上げ方をしていませんでした。そこで今年はまず、教会とは何か、ということについてエペソ書を通して教えられていきたいと思います。すでに何度も開いたことのある手紙かもしれませんが、イエス様が「わたしの教会を建てる」と言われたとき、どんな姿を想い描いていたのかをご一緒に学んでいきましょう。

1.エペソ教会

まず手紙が書き送られたエペソ教会が、どんな教会だったのかをお話したいと思います。ひと言で言うなら、エペソ教会はアジアと呼ばれた地域での宣教の拠点教会でした。私たちがアジアと聞くと、日本も含めたユーラシア大陸の東側を思いうかべますが、ローマ帝国時代のアジアは今のトルコの西側の地域、地中海に面した属州の呼び名でした。エペソはそのアジアの中心都市でした。地中海に面し、立派な港があり、海の向こう側はすぐギリシャ半島です。

使徒パウロがエペソ教会に手紙を書いたのですが、エペソ教会はパウロによって生み出された教会です。エペソでの働きについては使徒の働き18~19章に記されているので開いてみましょう。

まず、18:18~22です。コリントでの長期的な働きを終えたパウロと仲間たちは母教会であるアンティオキアに帰る途中でエペソの町に入りました。地中海を渡る船の港があったからです。エペソの町でパウロは、一人だけでユダヤ人会堂に入り、福音を解き明かし、人々はもっと話しを聞きたがりましたが、なぜかこのときパウロは長居せず、次の目的地へと向かいます。21節で「神のみこころなら、またあなたがたのところに戻って来ます」と言いましたが、その時はほどなくしてやってきました。

18:23でパウロが三回目の宣教旅行に出かけた様子が描かれていますが、今のトルコの中央地域を通って、以前建て上げた教会を励ましながら旅を続け、19:1でエペソの町に到着します。

そこで12人の弟子たちに会いますが、彼らは福音の理解が十分ではなかったので、より正確に福音を宣べ伝え、イエス・キリストの御名によってバプテスマを授けました。そして初めは3ヶ月ほどユダヤ人会堂で主にユダヤ人相手に福音を語りますが、その後は町の中心にあったと思われる「ティラノの講堂」と呼ばれる施設で福音を教えました。

10節には「これが二年続いたので、アジアに住む人々はみな、ユダヤ人もギリシア人も主のことばを聞いた」と記されています。

聖書の後ろに地図がついている方は、パウロの第3次伝道旅行の頁を見てくださると良いと思いますが、アジア属州の海岸沿いにいくつも教会があり、内陸部にも教会が生み出されていることが分かります。

ヨハネの黙示録には7つの教会が登場しますが、これらはエペソを中心とするアジアの諸教会のネットワークです。さらにエペソ教会には後にパウロの愛弟子テモテが派遣され、その後、使徒ヨハネが関わりを持っていました。伝説によれば、ヨハネはパトモス島への流刑から解放されたあと、エペソ教会を指導し、またイエス様のお母さんであるマリアも晩年をヨハネとともにエペソで過ごしたと言い伝えられています。

最後の話しはともかく、新約聖書に描かれたエペソ教会は確かに、アジアにおける宣教の拠点として非常に力強い歩みをしていたということです。

そんなエペソ教会にパウロは教会をテーマとする手紙を書き記しました。他の手紙のように、エペソ教会にはどうしても解決しなければならないような何か緊急の問題があったわけではありません。しかし、パウロはエペソの兄弟姉妹が教会についての神様のご計画をもっと良く理解し、確信を持って歩んで欲しいと願ったのです。

2.神の愛と約束

いよいよ中身に入っていきますが、3節から14節は一続きの文章になっています。

神様を讃える賛美といえるこの文には3つの区分があります。

6節と12節と14節がそれぞれ「ほめたたえられるためです」で区切られていて、最初は父なる神様がなさったこと、次にイエス様がなさったこと、最後に聖霊の神様がなさることが描かれています。

細かい説明をするとキリがないほどにとても綿密で、深い内容の箇所なのですが、ごくごく簡潔にこの箇所の内容をまとめるなら、神の愛に基づいた祝福のご計画を実現してくださった神様をほめたたえましょう、ということになります。

まず、父なる神様は私たちを祝福する壮大なご計画を立ててくださいました。4節に「世界の基が据えられる前から」と、詩的な表現で、ずっと前に私たちを選び、神の子供として傷のない者にしようと心に決めてくださいました。この計画のキモは、「イエス・キリストによって」ということと「愛をもって」ということです。

神様がご計画なさり、約束というかたちで与えてくださった祝福の計画は、罪のために苦しみ、滅びに向かっている私たちに対する愛のゆえであり、この計画の実現のためにイエス・キリストが決定的な役割を果たします。

7節から12節では、そのキリストがなさったことが描かれます。中心的な内容は、もちろんイエス様の十字架によって私たちの罪がつぐなわれ、赦されているということです。これは神様の恵みによることなのですが、この恵みは罪の赦しに留まらず、もっと大きなご計画があったことが「奥義」という言葉で表されています。神様の祝福のご計画が実行に移され、完成すると、すべてのものがキリストにあって一つにされ、ともに御国を受け継ぐ者になるということです。この一つにされ、ともに御国を受け継ぐということが、エペソ書で展開される教会の最も重要な考え方です。

「一つに集められる」という言葉は、おそらく現代の私たちが受け取る印象とずいぶん違ったのではないかと思います。教会がローマ帝国全土に急速に拡がった最初の300年くらいは、教会は皆が集まれる自分たちの会堂というものは持っていませんでした。何家族かが広い部屋を持つメンバーの家に集まりました。その小さな共同体ひとつひとつが、教会の本体です。家の教会という呼び方をしますが、そうした家の教会がエペソの市内のあちこちに散らばって存在し、一つのネットワークを形作っていました。それらをひっくるめてエペソの教会と呼んでいたわけです。それはコリントでもコロサイでもガラテヤでも同じです。教会の本体は、日常的に関わりのある家族の集まりだったのです。

その上、教会には様々な人種、特にユダヤ人とユダヤ人以外のクリスチャンが共に連なり、様々な立場、奴隷と主人といった社会的には格差のある人たちが同じ教会に属しているのです。そうした人種や立場の違いを新約時代の教会だからといって簡単に乗り越えられたわけではありません。絶えず様々なすれ違いや緊張を覚えながらも、いつもキリストにあって一つにされるのだ、ともに御国を受け継ぐ者とされたのだと、繰り返し教えられ、再確認することが必要だったに違いないのです。

3.私たちの存在と人生

さて、パウロの言葉は続きます。13~14節は、神様の壮大な救いのご計画と私たちの存在、そして人生が結びついているという内容です。

神様のご計画は旧約時代に、アブラハムやモーセ、イスラエルの民、ダビデ王などに契約という形で示され、また預言者達を通しては約束という形で示されてきました。そしてイエス様の十字架を通してその計画は実現し、約束が果たされました。今度は福音という形で私たちに示されるようになりました。

救いの福音を聞いて信じた私たちに13節にあるように聖霊が与えられます。聖霊なる神様は、私たちが御国を受け継ぐことの保証として私たちの心の内に住まわれます。

父なる神は「父」という喩えが用いられているので、何となくイメージしやすいですし、子なる神は、福音書に描かれている、人としてお生まれになったイエス様の姿を通してかなり具体的にその人となりを想像することができます。しかし、聖霊となると急に分かりにくいと感じる人が多いようです。何か、心を燃やすような熱い力や、エネルギーのように想像する人もいますし、「せいれい」という音の響きから、漢字違いの森の精霊や火の精霊のような自然界に隠れている神秘的な存在と混同する人もいます。

聖霊の神様はご自分ではなく、キリストを指し示し、表すような働き方をなさるので、聖霊が豊かに働かれるときに私たちが身近に感じるのはむしろイエス様のほうです。

福音を聞いた時に、イエス様が私の救い主なのだと分かる。私の罪のつぐないのために十字架で死んでよみがえってくださったイエス様が、生きておられ、ともにいてくださると分かる。感じられる、という時、聖霊が私たちのうちに働いておられます。

聖書を読んで、神様のご計画が分かる。そこに込められた神様の大きな愛や恵みが感じられるというとき、聖霊が私たちのうちに働いておられます。

私たちが御国を受け継ぐ者とされ、御国を拡大していく使命、つまり福音宣教の務めに生かされていることが分かり、導かれ、自分もその務めを担うとき、聖霊が私たちのうちに働いておられます。

また賛美と祈りの中で、また兄弟姉妹との交わりの中で聖霊は働き、私たちに喜びや慰め、一致を与えてくださいます。

そして私たちがそれでも罪を犯してしまったり、信仰が弱ったり、困難や悩みの中で意気消沈するときも、聖霊は様々な方法を使って私たちに神様の愛と恵みの大きさを思い出させ、慰め励ましてくださいます。

どう祈って良いかわからないほどに落ちてしまったときにも、聖霊は私たちのために代わりにとりなしてくださいます。

そうやって、神様が世界の基の置かれる前から私たちをご自分の子として傷のない者にしようと選び、計画してくださった祝福の計画を私たちの存在と人生において完成するまで、私たちの力となってくださるのです。

聖書に記されている神様の救いのご計画がイエス様によって実現したという、私たちのための大きな物語が、聖霊を通して、私たちの心や人生を変え、新しいいのちが吹き込まれ、私たちの物語となっていくのです。

適用:確信を持って生きる

パウロがエペソのクリスチャンたちに、そして後からこの手紙を読むすべてのクリスチャンたちにまず考えて欲しかったことは、自分がクリスチャンであるということについて、どう捉えるかということかも知れません。

ある人はクリスチャンの両親のもとに生まれたから自然と、あるいは成り行きでクリスチャンかなあと思って生活していたかも知れません。ある人は誰からから誘われて教会に行き始めたのがきっかけだったかも知れません。ある人は、人生の悩みに答えを求めて教会の門を叩いたのかも知れません。

エペソの町はアルテミスという女神信仰が盛んで、その上魔術が大流行していました。そんな中で人々の道徳性がひどく悪くなっており、嫌気がさして、もっと別な生き方、信仰のあり方はないかと探していた人もいたでしょう。ティラノの講堂で日々聖書の話しをして人々と議論しているパウロの姿に興味を持った人もいました。エペソではパウロを通して病気の癒やしなどの奇跡も行われていましたから、病気を治してもらったことでキリストに関心を寄せた人もいるでしょう。

具体的な事情、状況、経緯は様々です。しかしパウロは神様の永遠のご計画という、もっと大きな物語の中で自分の救いというものを捉えて欲しかったのです。それによって救いの確信をもち、人生の意味についての新しい見方ができるようになるからです。そして、私たちがイエス様を信じたときに加えられた教会とその役割について、確かな理解を持つための土台となるからです。

神様は世界の基の置かれる前から私たちを愛してくださり、ご自分の子とするために選び、それに相応しい者に日々造りかえる歩みへと導いてくださいました。そのご計画のためにひとり子イエス様をお与えくださり、十字架の贖いによって私たちの罪を赦し、イエス様によって、他の人たちと一つに集められ、一緒に神の御国を継ぐ者としていてくださいます。聖霊が私たちに気づきを与え、励まし、慰め、喜びと力を与えて、この大きな物語が完成にいたるまで導いてくれます。

神様の大きな救いの物語を知ることは、私たちの人生の物語に新しい彩りと、思いもしなかったストーリーの展開があることに気付くことです。

70周年記念誌が出来たら、そこに教会の歴史が様々な人の証言や年表という形で記されているでしょう。その中に、自分がバプテスマを受けた日のことや教会に加えられた年のことがごく短く記されているでしょう。そういうのを見る時、私たちは自分がこの教会の歴史の一部であることに気付かされます。そしてこの東北の地にある小さな教会もまた、神様の永遠のご計画の中で、この時代、この地域のため、ここに暮らす人々のために選ばれ、建てられた教会であることを覚えさせられます。

イエス様を信じること、クリスチャンになることは、個人的には大きな決断ですが、実は神様の昔からのご計画があって、長い時間をかけてそれを実現し、ずっと昔に選んでくれていた私と、今この時代にちゃんと出会ってくださったということです。イエス様は弟子たちに「あなたがたがわたしを選んだのではなく、わたしたあなたがを選んだ」と言われましたが、まさに、私がイエス様を信じるずっと前から、神様は私たちを愛し、選び、救いのために全てを備えていてくださったのです。そのことを確信して歩んでいきましょう。そして、続けてエペソ書を通して教会について学んでいくこととしましょう。

祈り

「天の父なる神様、私たちがイエス様を知るずっと前から、それどころか、この世界の始まる前から私たちを知っておられ、愛してくださり、あなたのものにしようとお選びくださってありがとうございます。

どうぞ、あなたの永遠の愛と深い思いをますます教えてくださり、あなたの愛とご計画の中で新しく生きている確信と喜びで満たしてください。そして、一つとされ、共に御国を受け継ぐ者とされた兄弟姉妹を愛し、ともに歩ませてください。

イエス・キリストのお名前によって祈ります。」

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